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Festina lente

気が向くままに、考えごとの適当な記録処。

シン・ゴジラは原点回帰とヒューマンドラマだったという話。

今週のお題「映画の夏」

 

お題なるものがたまたま書きたいものと合致したので。
 
シン・ゴジラ見てきました。まだ一回目ですが、興奮さめないうちに感想を書きます。二回目行くまでの整理と備忘録。あと、今度見る時の注目ポイント。
 
一言で言えば最高だった。でも、もっとゴジラを観たい!とも思った、逆に言えばそれだけ吸引力があるともいう
ネタバレ配慮なしなので注意。
見てない人は、「人間と意思疎通などしないゴジラという超越的虚構に立ち向かう人間たちの、ヒューマンドラマ」、で気になった人はぜひ観てください。
マッドマックスなどに通じる気持ちよさがあります。
なお、私はマッドマックスが見られないくらいに爆音が苦手ですが、ノイズよりも音楽として成り立っているためか、十分に楽しめました。思い出補正もある。
 
あと、ツイッターやブログで感想や考察を漁ってますので、影響受けてると思います。
 

 

私はもともと、全部は見てないけどゴジラは好きだよ、という程度の軽いファンです。正確に言えばモスラファンであってゴジラではない、というところなんですけども。どちらかと言えばゴジラを通して描く人間と、ゴジラが壊していく世界が好きで、怪獣同士の戦いに熱くなるほうではありません。
大きくて格好良くて、恐竜ぽいから、好き。そんな程度です。
 
ただ、「ゴジラ・ファイナルウォーズ」を観て「私の中のゴジラは終わった」と思った人間です。
私にとって、ゴジラは人間と意思疎通などしない、ただ破壊するだけの存在でした。ミニラのことなど考えだしたらアレだし(あまりミニラ出演作品を観ていないという勝手な理由ですけども、いまいち受け入れがたい)、ゴジラごとに設定も微妙に違うけど、私にとっては「人間が生み出した、人災で天災」が日本を破壊する、その災害を人間がぎりぎりで制する様子を、観たかったんです。
 
ファイナルウォーズは…ミュータントの悲哀の話だから……ゴジラが和解するとこなんて観たくなかった……いや、私から見たゴジラであって、対決ゴジラは多いのも知ってる……
 
他の作品への悲しみはさておき、本作は、そういう意味で「ゴジラは意思疎通できない怪物」でした。
 
最初から緊迫感のある雰囲気が、「個人ビデオを撮ったような映像」から伝わってきて、そこから一切ためもなく、ただひたすら緊張続いてアドレナリン出っ放し。
 
1.1回目の感想として
今年の映画だと私にとってズートピアが最高に好きなんですが、あれは物語の構成が完璧で、起承転結が2つ、小さな山と大きな山があるんですね。小さな山の「結」が大きな山の「転」にあたり、そこから結に向かって一直線という、気持ち良いくらいきれいな物語でした。
それに対し、シン・ゴジラは転らしい転がありません。あえて言えば、ゴジラが停止したあたりか。けれど、緩急をつけずにほぼずっと緊張感を保っていました。
いかにゴジラゴジラとして描くか、ゴジラが現れた時にいかに人間が行動するか。そういうシミュレーションドラマでもあると思います。
尺のせいもあるのでしょうが、人間がお互い足を引っ張ることなく、ひたすら目的「ゴジラを倒せ」に向かっていくのはとてもすがすがしかった。
ずっと緊張感を保っていたから、最後の「ヤシオリ作戦」が、ちょっとしりすぼみ感すらあるのも納得です。だって、他のゴジラでも、冷凍作戦は対ゴジラ戦で使われてましたから。ヤシオリ作戦ってなんだろう、と思って検索かけたら、八岐大蛇を倒す時に飲ませたお神酒だそうで。

シン・ゴジラの「ヤシオリ作戦」!?のヤシオリってどういう意味!?日本の神話が元ネタ!? | Love・Lion・Life

とっさにそんな言葉が出たのか、前から考えていたのか、ちょっと次見た時にどんな演技しているか、確認したいと思います。

 

 
 
ゴジラ以外の部分が緻密に作られた話、とはパンフレットにもあったけれど。
設定を荒唐無稽にするなら、それ以外を再現可能なくらい、現実に近づける。私は有川浩自衛隊物の中では海の底が最高に好きなんですが、のあとがきで、米軍、自衛隊警察と役割を振り分けてシミュレーションをしたと書かれていました。なので、「ゴジラが実際に現れたらどう動くか」を現実に近づけて描いているのは、とても楽しくずっとこぶしを握りながら観ていました。

音楽も、とてもよかったです。初めて爆音でも観てみたい、と思いました。冒頭に書いたように、私は音というものが苦手で、花火や雷のような「破裂音」に無意識に体を硬直させてしまいます。

なので、爆発音が激しいと物語に入り込めないんですが、全体的に音楽はクラシカルなんですね。なので、とても聴き心地が良かった。大変申し訳ないことに私はエヴァ未履修組なんですが、聞くところによれば、そういうクラシカルな音楽は「らしい」ですね?

パンフレットに、エヴァの音楽を使ったとあり、確かに聞き覚えのある音楽もありましたが、耳馴染みがよく物語に集中することができました。

 

登場人物たちについて。

主人公格は矢口なわけですが、これはゴジラを通した群像劇としてみるほうが良い気がします。その中で目立つのが、矢口。理想主義の官僚。「政治家は、敵と味方がはっきり分かれるところが良い」という彼の砕けた笑顔が良かった。

非常に「キャラクター的」な人物ですが、ゴジラという架空に対抗する有象無象の人間たちを描くには、はっきりとキャラ分けしなければいけないだろうし、人間関係を描く映画ではないのだから、わかりやすくて好きです。

最初の閣僚会議で、なかなか進まない官僚主義にいい感じにじれることで矢口に感情移入できましたし、けれど「はっきり口にしないと国民は安心しない」と主義を持った総理も良かった。

某女性知事をイメージしたのでは、と思われる花森防衛大臣も良かったですね。それぞれの立場、考えがはっきり口にされ、その中で総理が吟味する。

「国民に自衛隊が銃を向けるわけにはいかない」

あとから考えれば、そのために多くの人間、自分も犠牲になったわけですが、今後ゴジラが在り続け「非常事態」が常態化した時にも、自衛隊が国民に銃を向けてはならない、という主張が感じられて、とても良いシーンでした。

それで、結局閣僚ほぼ全滅になってしまうんですけどね。

 石原さとみのカヨコも最高でした。「英語がヘタという意見も聞く」とツイッターでまわってきましたが、私が見る限りそんなにない、かな?

私は英語の、例えば日系移民らしさや中華系らしさ、州ごとの違いはわからないので、USAの自立した女性政治家、のイメージに合致すると感じました。基本的には日本語が使えるのに、発音が巻き舌になったり、言葉が出てこなくて流暢な英語が出て来るの、あるあるだと思ってる。

「武器とするために体のラインを出した服を用意したので、ご飯をちゃんと食べられなかった」というインタビュー記事を読みましたが、本当に、露出度は少ないのにきっちり体のラインを魅せる服装、本当に格好良かった。ピンヒールも、非常事態の時には履いてないはず(たぶん。二回目に確認したいと思います)で、それでも踵のある靴を選ぶところとか。だいすき。

カヨコの決断も、もちろん祖母の国に核を落すわけにはいかない、というのも本音だと思いますが、しかしおそらく政治的判断も入ってますよね。あそこでは切り取るように、米国高官という「薬指に指輪をつけた人物」が、自分の政治生命を賭けて日本の決断を支持してくれています。そこにカヨコが手を重ねるシーン、本当に良かった。

でも、これ、小説だったら裏描写もあったでしょうし、スーパーコンピュータを日本に提供するシーンで女性の教授?が「人間を信じましょう」というのも、もうちょっと細かく描かれていたかもしれない。

 

けれど、この話は、「人間が人間を信じられるか」という話でもあり、ゴジラを倒すための最適解に向けて爆走する話です。少なくとも、私はそう理解しています。

マッドマックスでもそうでしたが、足手まといがいない。誰もが、同じ目的を持ち、共有し、それに向かって突き進む。

政治的主張が激しい、という評も読みました。私はそこまで激しいと思いませんでした。自衛隊と政治家が出てくる中で、ある程度政治をどう見せるか、は決めなければぶれると思いますし、結論として「ゴジラを倒すor日本および世界が破壊される」であれば、破壊されるエンドロールを避けるためには、政治家も自衛隊も一丸とならなければゴジラを倒せませんでした、は筋が通っていると思います。

それこそ、自衛隊だけで倒せました、地球防衛軍が倒しました、迫害されたミュータントが、未知の怪獣が、どんどん絵空事になり、この物語の主軸である「虚構VS現実」ではなくなってしまいます。

そして、その現実が「日本」でもあり、「世界」であった、と私は思っています。政治的に理想的に描かれているとも思いますが、USA、フランス、他の国々も「より良き手段の最適解」を選んでいました。

日本の凍結手段がなければ、核を落すのは対ゴジラとしては最適解でしょう。ゴジラ研究がさらに進んでいたアメリカです、きっと日本が考えていた飛翔の可能性にも気づいていた。

最後のゴジラのアップのシーン、あそこで人型とも飛翔ともとれない形状への進化が見られました。色んな意見があるようで、人型が有力なのかな?と思います。

「種の保存を考えれば、別個体を生み出すのでは」とは友人の意見ですが、人型か何かはわかりません。しかし、完全生物で、プログラムによれば「外敵が存在しないため耳などの形状は不要」とあったので、初めて個体として危機を感じたのであれば、新しい個体を生み出す可能性は高いと思います。

 

今回のゴジラは、傷だらけになりながら自己成長を続ける生き物です。このゴジラと牧博士の関連性は、もうちょっと考えたいし他の人の意見も読んでみたい。牧博士こそがゴジラでは、というフセッターを読んだときはすごい、と素直に思いました。人間を取り込んだような、とはプログラムでも書かれているところです。

ただ、どのような形で「核に耐性をもった深海魚」を持ちだしたのかは謎ですし、それこそ、その深海魚を食べたのかな…科学的には荒唐無稽であっても、「それらしい」理論を、この作品はつけているのではないかな、と思っています。

 

そういえば赤坂さんにも尾藤さんにも、塚本准教授についても触れてない。尾藤さん、最高に好きなタイプです。感情をほぼ見せずに理論を述べ、反論し間違っていたら代案を出す。だからこそ、最後の小さなぎこちない笑みのアップが印象に残りました。

赤坂さんは、竹野内豊がもともと好きなので…でも恋愛ドラマを見ることが苦手でだいぶ疎遠になってましたが、相変わらず良い声と演技をされると思いました。役どころもにくい、最後の「里見さんだよ」からの里見大臣代理の、90度の礼。本当に良かった。里見大臣代理が本当に良い……

 

自衛隊の戦いや、メディアの使い方、色々思う所はありますが、二回目観てからかな。

自衛隊の方々も本当に格好良いんですよねぇ。ヤシオリ作戦の前に、自衛隊で「駆除」(この言葉の使い方も好き)しようとして、失敗なのですから壊走してもいいわけですが、きっちり仕事として「撤退」している。そして、それを受けて、大臣が総理に報告する。

仕事できる、名もなき人たちが、本当に格好良い。

 

宮崎駿のインタビュー集の中で、宮崎監督が庵野監督に対し、「自分の知っている人間以外は嫌いだ、いなくてよい、だから画面に出さない」と評していたことがあり(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」)、私は庵野監督の作品をエヴァの周りの評判くらいでしか知らなかったので、「そういうものを撮る人なのかな」などと勝手に思っていたんですが、ぜんぜん、そんなことなかった。だいぶ時間が経っているからかもしれませんが。

「群像としての人間たち」が、ここで、一生懸命やって、そうして、ゴジラに対応することができる。人間賛歌の物語でもあると思います。

 

2.二回目に個人的に注目したいところ

・博士の最初のシーンで、遺言の隣にあった「春と修羅」を読んでから、鑑賞に挑みたい。
 ・ゴジラが一度大暴れしたあと、家族写真を持っていた?森課長
・最後のゴジラの形状
・第二形態時の、ゴジラの様相
 
他、思いつくごとに追記していくかな…
 
3.物足りなかったこと
私がゴジラに求めるものの一つが、「全部壊してしまって、ゴジラが無慈悲に存在する」という点です。確かに、今回のシン・ゴジラにおいて、ゴジラは「積極的に攻撃しないが、存在するだけで人間社会を破壊する」怪獣でした。
仕方ないのもわかるんですが、しかし、絵としては「23区が破壊 され、西東京市などの建物は残り、富士山が大きく見える」くらいが理想でした。
怪獣同士の戦いと違って、カタルシスを得ることはできませんでしたし、怪獣映画というある種「最高のB級映画」である以上、そこを期待して物足りない人も たくさんいると思います。
もっと尺が長かったら、などとつい思ってしまいますね。前後編でやれなかったのかなあとか、しかし「流浪に剣心」も、一作目が成功したから二作目で前後編がやれたわけで、などとつい、「大人の事情」を感じてしまいます。
なので、子供時代の私が見たら、「もっとゴジラも観たい!」だと思います。
ただ、子どもだったら、政治家のシーンわかったかな…いや、案外わかったかもしれない。みんな一生懸命、自分のできる限りを尽くしたことは、理解できるんじゃないでしょうか。
だからやっぱりどのシーンも削れないし、リアリティを追求するならあれ以上東京は壊せないし…勝手にジレンマに陥っています。
途中引用した宮崎駿のインタビューの中で「関東大震災を待ち望んでいるのでは?」というインタビュアーの問いがあるんですが、その中で、宮崎監督は「終末も甘美に見えた。けれど、甘美な週末はこない。焼野原になんてならないし、ビルの耐震化でみんな残る」と言っていて、現実問題を考えるとそうだな、と思ってしまいました。
なので、リアリティと(私が勝手に感じている)ゴジラの美学のバランスですし、ぎりぎりのところだったのかなあ。
あえて言えば、最初に描かれた群衆の声、もちろん疎開シーンなども描かれ、関東大震災をおそらく意識し、あえて描かなかった「群衆の哀しみ」は、もうちょっと描いてほしかった。これも関東大震災を思い出すからもっと少ない方がという意見もありますし、色々だと思いますが。
本当に、難しい。
 
 
けれど、確実に言えるのは、こうやって長文を書いて残して、二回目に備えよう、と思うくらいにはすごい作品で、そのすごさは賛否両方に現れてるのでは、と思います。
 
(もっとアンチが増えてもいいと思うんだ…)(いや非難は読みたいわけではないけど)(でも異なる価値観、視点で物語を見返すのも楽しい)