Festina lente

気が向くままに、考えごとの適当な記録処。

主人公「安藤竜太郎」とバブみ~キリストとマリア添え~

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On the way to Living Dead、通称OLDについての妄想考察シリーズ1。

 

最初は主人公の安藤竜太郎から、というか世界分析は割と気が済んだので落ち着いた。何気に、世界情勢も混乱時期で美味しいのだけど(中国大大会とか、EU関連とか、プーチン絡みとか)、おそらく「君と僕の壊れた世界」(by西尾維新。面白い。)なセカイ系に近い物語であり、広がるより閉じる円環系の物語なので、そっち方面はそのうち別記事にします、気が向いたら。

まだまとまっていない書き散らかし。しょっぱなからタイトルで飛ばして振り落とします。後で後悔したら変えます。

 

1巻時点では、彼の魅力その他諸々はわからないので、書籍しか読んでない組はcomicoで読んでから続きをどうぞ。

公式サイト

http://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=8

書籍はこちらから。(アフィリエイトではありません)

https://www.amazon.co.jp/way-Living-Dead-ZERO-SUM/dp/4758031940/ref=tmm_other_meta_binding_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=

 

 

 ヒーローとばぶみ。最初はあまり好きな言葉ではなかったんですが、ばぶみってわかりやすい言葉だなと思います。永遠に母の影を追う主人公。

 

正直、安藤竜太郎ってキャラクター自体には、私はそこまで魅力を感じてませんでした。というと、キャラ人気ではダントツなので色々な方面から怒られるかもしれませんが、そのあたりは好みなのでどうしようもない。ただし、闇落ち済み、悪堕ち間際の今では大好きです。

女性に幻想抱いたまま「生きた彼は死に、そうして彼は魔法使いになりました!!」(脳内キャッチコピー)

キャラクターとしては魅力あると思いますが好みとは少しずれる、なのにどこか彼が気になる。その「何か」に気づいたのは、連載が終わってからでした。遅い。

キャラクターとしては、作中キャラからも「良くも悪くも好悪を持たれやすい」性質を持っていると思います。それは、周りの反応だったり、あと他者と関わろうとしない割にどっぷりハマりやすい「この子詐欺に合いそう」気質だったりで思うこと。

まとめると、

・内斗から「盛大に嫌われている」→理由があるのか?

・黒須から驚くほどに構われている。信頼を得ているわけではない。お父さんぽい(けど実際はお母さんポジだと後半になるにつれ判明した)

・三ノ輪に好かれ、ストンされてる(恋愛の有無は不明)

・恵比寿からは割と好悪揺れ動く感情を持たれている(例:挑発する態度、安藤くん元気かな、と内斗側について後悔するときに思い出すのが安藤)

・神谷からは「川の色が…」と、少なくとも悪い印象は持たれていない。

・明夜からは「王子様」

 

などなど。個人的に気になったのが、「悪感情の少なさ」です。初期に千住から多少好かれてはいなかったものの、安藤個人への悪感情ではなかった。森や料理長など、無関心キャラもいたけれど、それにしても好意が多い。

ここは私の好みなんですが、好きにも嫌いにもなられやすいキャラは、すっごく嫌われるシーンも描いてほしいんですよね。そのほうが、地に足のついた世界になるから。逆に、それで恵比寿あたりがもやもやしてもとても美味しい。

安藤が闇落ちする物語だから仕方ない部分はあるんですが、安藤の主人公として「嫌われる要素」を受け持ったのがまひる。

安藤が嫌われないように、嫌われそうな行動をとる時は、まひるに行動させる。それは、三ノ輪を助けようとするシーンだったり、内斗との対決シーンだったり。論拠引っ張り出そうとしない時点で脳内補正の可能性もありますが、思い出したら追加する。何度か物語進めるために、安藤じゃなくてまひるに行動させてるなって瞬間があったんだ…

 

ずるずる書き進めて何の話だっけ、そうだばぶみの話です。この言葉が好きでない、という人も多いと思うんですが、私は男性が母性、聖母を求めているという意味で使用しています。

まひるに安藤がすとんしたきっかけは「手に触れられた時に小ささを感じたこと」「まっすぐな目」だと思います、描写的に。私はどうしても前者が理解できなかったんですが、おそらく童貞の安藤が、おまけに母の記憶もおぼろげな彼が、初めて「女性」を体で認識した瞬間だったんだと思います。柔らかさに、母の記憶を思い出してもいい。少なくとも、安藤とまひるぼ名シーン「信じてる」は、明らかに母親だった。脳内にキリストを抱くマリア像が浮かんだ。

安藤はそれまで、おそらく作中ずっと、「大勢を救うこと」という救い主としての思想を持っていました。豊田を救おうとしたり、一見クールに見せかけて、中身は人情派です。それは、逆に言えば「誰も特別視しない」ということです。その中で、安藤はかなりまひるを特別視していくんですけど、それって最初の「小さいから守らないといけない」でもいいと思うんですよね。あと、「竜太郎さん」て名前で呼ばれたのも大きそう。名前が個人のアイデンティティーであり、キーになるのは、果てしない物語でもお馴染みです。

救い主としての思想は、祖父であるパールマンから植えつけられたものです。この辺りについては…そのうちかな。

パールマンは、別途記事にしたい、とても好きなキャラクターです。最後の夢でのシーンを見るに、竜太郎にとって祖父は「父性」です。父性の概念は色々ありますが、私のいう父性はエゴグラムの「CP」のことをさします。

エゴグラムについては、このサイトhttps://www.peacemind.com/egogram_about.html

がわかりやすいかな。Wikiでもあればよかったんですけど。

「人間関係の心理学理論に基づいて作られた性格診断テスト」で、人の性格を5つの心の領域(CP・NP・A・FC・AC)に分けて分析します。

その中で、CPは、理性、冷静さや落ち着き、論理性などを表し、高いと「建前を気にする」「批判的」「完璧主義」「努力家」「ルールを守る」などの要素が現れます。初期の竜太郎はCPが高いように思うんですが、これ、祖父から「私のようになれ」と育てられた結果だと思います。なぜなら、後半になるにしたがって、NP(過保護、過干渉、相手に共感、弱いものを庇う)の要素が強くなるからです。本来はNP高めの人間だったのが、CPが高くなるように育てられたことで「全員平等に」「救わなければならない」となったのではないかと。

 

そして、竜太郎は黒須を選ばなかった。黒須に「クロス=十字架」要素や母的要素があるのでわかりにくいんですが、竜太郎は「父(祖父や黒須)を捨て、母(まひる)を選んだ」という構図だと思います。

黒須は、守り育てる「父」だった。三ノ輪は、竜太郎を尊敬し、憧れていた。まひるだけが、「竜太郎に期待しなかった」。竜太郎が母からの愛に飢えるアダルトチルドレンであり、その中のヒーロー類型であると考えれば、ロストチャイルドのまひると相性いいのは当然なんだよなあ。きみとぼくのせかい。

妄想極まわれりって感じですが、アメリカでも竜太郎って目立ったと思うんですよね。クォーターであれば、ってここも異論が残るんですけど、アジア人の血が入っていれば、体躯は他より幼かったと思います。それであの容貌。自分に注目しない人間って、ほとんどいなかったんじゃないかなあ。まひるは最初から、最後の心変わりまで、竜太郎のことを「等身大の竜太郎さん」としてしか、見ていませんでした。

今まで色眼鏡で見られがちで、甘やかされてきた竜太郎にとっては、新鮮で、救いだったんじゃないかな。これは私の経験則と物語を読んできた中でしかないから間違ってる可能性も高いですけど、手の届かない、自分を見ない人こそ、好きになる。本当の自分を見つけてくれると思うから。

特にヒーロー気質で、優等生であれと育てられてきた人は、「本当の自分」を見てくれる人に弱い。って、童話や数々の少女マンガで「ふつうの女の子に、雑に扱われて等身大の自分を見てくれて、女の子に惚れるイケメン」を見てきて思います笑

おまけに、まひるは母親要素を持っていて、現に竜太郎は母親の影をまひるに見ています。

 

キリスト教要素を入れ忘れた。「私に家族はいません」と、聖母マリアと兄の前で言ったキリストとの対比とか、マグダラのマリアがまだ完全に復活を遂げていないイエスに出会った時に「我に触れるな」と拒絶した話とかと対比しようと思って忘れてた。結局、竜太郎は拒絶できなかったから、復活できなかったんだなあ。イエスは「私にすがりつくのはよしなさい」という意味での「我に触れるな」だったんですが、まひるの好意を竜太郎は拒めずに「待っていてくれ」と言い、その結果があの結末だから、なんというか。

みみ先生がすごすぎます。それにつきる。

 

はてしない物語」のアニマとしてのまひるや悪の克服としての竜退治(竜太郎は、内斗の倒されなかった)とかもあるんですが、モチーフが多すぎて拾いきれないのでこのへんでいったん終わります。みみ先生がすごすぎて、知識と考察がついていかない。構造分析というには散漫すぎる文章になってしまう。

次はまひるの話かな。OLDとは何か、とかもやりたいな。竜太郎についても、どう考えても掘り下げきってないんですが、他キャラとの絡みなしに考えられないので、いったん終わり。

 

「救い主は、聖母に出会ったことで、大勢の人を救うことをやめたのです。一人だけを、愛し、そうして彼はただのひとになりました。たった一人を選んだ愛の物語です」